Traverse赤道儀化アプリを公開しました

アプリ試作

TRAVERSE経緯台を赤道儀として動かすWindowsアプリを試作してみました。1画面だけのシンプルなアプリです。
名称は「赤道儀のフリをする」ので EQ Pretender(仮称)としてます。

通常、アプリからトラバースへ接続するところ、EQ Pretender が間に入って赤道儀のフリをします。

使い方

① 先にEP Pretenderをトラバースに繋ぎます。
ネットワーク(WiFi)かシリアル(USBケーブル)かを選択して、Runボタン を押すだけです。実行中は Running と表示されます。

② 次にアプリからEQ Pretenderに接続します。
そのために必要なアプリ側の設定は以下の3つ。
・リードタイムアウトは400に延ばす
・「デバイスを探す」はOFF
・固定IPには 「127.0.0.1」をセット
これで、アプリから「赤道儀」として接続してください。

試作アプリのダウンロードはこちらから

注意:署名していないアプリなので、インストール時に警告が出ます。無保証・ノーサポートです
下記のアプリ利用同意書に同意頂き、こちらからmsiファイルをダウンロードしてください。
(ダウンロードした場合は同意頂けたとみなします。)
なお、ソースコードも公開(MITライセンス)しています。ご自由にお使いください。

アプリ利用同意書
本アプリをダウンロード・インストール・利用する前に、以下の利用同意書をよくお読みいただき、ご同意の上ご利用ください。
アプリ概要:本アプリは、Traverse経緯台を赤道儀と認識させる試作アプリです。
利用規約:本アプリの利用には、以下の利用規約が適用されます。本規約に同意いただけない場合は、本アプリをダウンロード・インストール・利用することはできません。
利用許諾 本アプリは、上田直生(以下「作者」)が開発・提供するものであり、無償で利用することができます。 本アプリの著作権その他の知的財産権は、作者に帰属します。 本アプリの利用は、個人利用のみに限ります。商用利用はできません。 本アプリを改変、複製、頒布、貸与することはできません。 本アプリを解析、逆コンパイルすることはできません。
免責事項 本アプリは、現状のまま「ありのまま」提供されます。作者は、本アプリに関していかなる保証も行いません。 本アプリの利用に起因する、直接的、間接的、偶発的、特別、結果的、懲罰的損害(データ損失、利益の損失、事業の中断など)について、作者は一切責任を負いません。
個人情報保護 本アプリは、利用者の個人情報を収集することはありません。 本アプリは、利用者の同意を得ることなく、第三者に個人情報を提供することはありません。
準拠法及び管轄裁判所 本利用規約は、日本法に準拠し、日本法に基づいて解釈されます。 本利用規約に関する紛争は、大阪地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とします。
同意:本アプリをダウンロード・インストール・利用することは、本利用規約に同意したものとみなされます。
改訂:本利用規約は、作者が必要に応じて改訂することがあります。改訂された利用規約は、本アプリ内に表示された時点で効力発生するものとします。
連絡先:本アプリに関するご質問やご意見は、info@stellartech.science までお問い合わせください。

Traverse の赤道儀化に成功!

先日、Traverseのモーター駆動メッセージを解析して遊んでいたので、あぷらなーとさんの「トラバースを『まちがった運用』で楽しむ」を読んで、創作意欲を刺激されてしまい、赤道儀化にチャレンジしてみようと思いました。

AZ-GTiの経験から、Traverse(以下「マウント」)とSynScanApp Pro(以下「アプリ」)の通信の間に割り込んで、赤道儀フラグを立てたところ、アプリは赤道儀も選べるようになりました。(この仕様はManual: Sky-Watcher Motor Controller Command Set に掲載されています。)

変更点① アプリからの「:q1010000」に対する返事「=008000」に赤道儀対応フラグ(2文字目のビット4)を立てて「=088000」に偽装する。

ところが、赤緯軸が逆に動く・・・・

ところが、赤緯軸の動きが逆で、アライメントと導入が明後日の方向を向いてしまいます。モーターを動かすコマンドを無理やり反転してみましたが、アライメントと導入にはモーターを動かすコマンドは使っておらず、別のコマンドを使っているようで、全く解決しませんでした。

大量にログを取って実験・分析

通信仕様が分からない以上、いろいろ実験をして通信ログ取り、そこから分析、推測、するしかありませんが、闇雲にデータを取ってもカオスすぎて分からなくなります。
そこであぷらなーとさんに習って現在地を北極点にし、赤緯軸のみをGoToで1度刻み、1分刻み、1秒刻みのように一定の規則で動かして通信データを取ります。
通信ログから取得したデータと、Gotoで指定した赤緯座標とをプロットしてみると、なんと直線状に分布しているではないですか!!

これは規則的なので、いわゆる比例定数から「1度あたりのステップ数」と「360度あたりのステップ数」を逆算。通信ログ中にそれらしい数値はないか探してみると、接続開始直後にやりとりする値の一つが「360度あたりのステップ数」と非常に近い。しかもどの通信ログを見ても、その数値は不変。
これは接続開始時に「赤緯軸360度に対するステップ数」が送られているに違いない。

そこで、その数値の正負を逆に偽装してみたところ、ついに赤緯軸の回転方向が反対になりました!!

変更点② アプリからの「:X20002」に対する返事「000F865B」(10進数で+1017435)の符号を逆にして「FFF079A5」(10進数で-1017435) に偽装する

動作検証

赤緯軸の動きが反対になったので、これで赤道儀として動くかどうか、検証です。
赤道儀対応ファームウェアを入れたAZ-GTi を「 お手本」として、それと同じ動きをすれば赤道儀として問題ないだろうということで、まずは室内にてAZ-GTiとTraverseを並べ、どちらもそれぞれSynScanProアプリをつないで同時に操作します。
この動画は

ベガ(アライメント)⇒レグルスアンタレススピカアークトゥルスアンタレス北極星

と動かしたタイムラプス(10倍速)です。
結果、赤道儀化したAZ-GTiと同じ動きをし、同じ方向を向きました!
ということで、Traverseの赤道儀化は成功!と言えそうです。

通信変更内容・試作アプリ

今回のテスト用に作ったトラバースを赤道儀化する試作アプリ(Windowsアプリ)は、数日中に公開予定です。
何て名前にしようか考え中。

まとめ

TRAVERSEをSynScanAppで赤道儀として動かす為には、以下の2点が必要です。
1)「:q1010000」に対する返事に赤道儀対応フラグ(2文字目のビット4)を立てる。
2)「:X20002」に対する返事の符号を逆にする

「狂拡大」前提の広角レンズ選び・2機種比較

皆既日食のタイムラプスを撮るのに2本の高性能広角レンズを検証したので、メモを残しておきます。
検証したのは
SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art

TAMRON 24mm F/2.8 Di III OSD M1:2
です。

今回2024/4/8の日食、撮影予定地・固定撮影で全過程を撮るには、画角を計算すると28㎜より短い広角レンズが必要でした。
一方、こういった画角のレンズでは太陽や月の写るサイズはものすごく小さくなります。欠けていく太陽の「形」もくっきり写すには、高解像度のカメラと、それに見合った解像性能のレンズが必要になってきます。

まず、カメラは超高画素の SONY α7RⅣ をレンタル。有効画素数は約6100万画素(9504 x 6336)。20㎜で撮った風景写真で一部を切り出してみても、十分な解像度があるのが分かります。

これで原寸切り出し。これだけ画素があれば、計算上20㎜レンズで視直径 0.5度の太陽は約60ピクセルの直径を確保できることになります。

こちらは同じカメラ・レンズの組み合わせで、風景とNDフィルタによる太陽像を合成したもの。写真における太陽の大きさはこんなに小さいです。

だた、狂拡大が前提なので、拡大してボケていると意味がありません。
そこで、星景写真で評価の高いらしい『SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art』と、こちらの「α7R4/R5の解像度を最大限活かせるレンズ(意訳)」と言う記事でトップ評価のある『TAMRON 24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 』の2本をレンタルし、比較検証しました。

素のレンズ性能を見たいので、色収差補正、歪曲収差補正、露出補正、手振れ補正、などカメラ側のインテリジェントな補正機能は全てOFFにした上で、NDフィルタ越しの太陽の形について、狂拡大性能を確かめてみました。

ポイント1:解像性能

これは 9504 x 6336 pxの写真から太陽が写っている周囲 100×100 pxをそれぞれ切り出したもの。
原寸で表示しています。
太陽の位置はほぼ画面中央です。
どちらも狂拡大とは思えないほどシャープな輪郭です。TAMRONの方は若干色収差が見れますが、ここまで狂拡大しないと見えないレベルです。(TAMRONはND100を2枚使ってるので、像が甘くなるのは仕方ありません。)

SIGMA 20㎜ (f4,1/1000s, ISO200, ND100000, α7RⅣ)

TAMRON 24mm(f4, 1/8000,ISO50, ND100 x2枚, α7RⅣ)

ポイント2:フォーカスの追い込みが簡単か

そもそも被写界深度の深い広角レンズだけど、狂拡大メインなのでフォーカスを追い込む必要がありました。カメラには電子モニターしかないので、解放絞りで拡大率を上げてもほとんどフォーカスの山が分からない。
そこでバーティノフマスクで追い込むことに。といっても普通のバーティノフマスクは役に立たないので、透明プラバンにカッターで30度ほどずらして平行傷をつけた自作マスクを作成してみました。試しにシリウスを入れて、モニタを虫眼鏡で拡大してみると、ちゃんとマスクが機能していました!

これはSIGMA 20㎜、TAMRON 24㎜、どちらも同じように追い込むことは可能でした。

ポイント3:フォーカスの保持は可能か

さて、問題は、夜のシリウス+バーティノフマスクで追い込んだフォーカスを昼間の太陽撮影までキープしておく方法です。テープでフォーカスリングを固定してもどうしても少し動いてしまう気がします。

ところが、なんとSIGMA 20㎜にはフォーカス・スイッチがある!
(SIGMAサイトより引用『「LOCK」にするとフォーカスリング操作が無効となる、MFLスイッチを新たに搭載。マニュアルフォーカスで合焦後にフォーカスリング操作を無効にすることで、フォーカスリングを動かしてピントがずれてしまうなどの誤操作を防止します。』)

写真は製品ホームページより

これがすごい。スイッチをOFFにすると、現在のフォーカスのまま固定してくれる。うっかりフォーカスリングを触っても、カメラの電源を入れ直しても、レンズを外して付け直しても、フォーカスは全く動かない。これはすばらしい。コレが決め手となってSIGMAに決定しました。

一方、TAMRON 24㎜は、カメラの電源を入れ直すと、レンズが強制的に動き、ホームポジションにキャリブレーションされるように動きます。フォーカスリングをテープで固定しても意味が無いので、こちらは諦めました。結像性能は素晴らしいのに、残念。

余談:歪曲収差について

TAMRON 24㎜は「歪曲収差が酷く、カメラの収差補正をONにしないと使い物にならない」と酷評されている記事もありました。たしかにカメラの収差補正をOFFにすると、かなりの樽型の歪曲収差が目立ちます。しかし、、、

TAMRON 24mm

SIGMA 20mm

太陽を画面左上隅の角に近い場所にして写すと、「歪曲収差の大きい」TAMRON 24㎜は画面端でもほぼ円に写るのに対して、「歪曲収差の小さい」SIGMA 20㎜は、中心から離れる方向に引き伸ばされて歪んでしまいました。
写すものが星で「点像」なら気にならないかもしれませんが、日食・月食を写すならなら、あえて歪曲収差が大きいレンズを使うという方法もあります。
(ただし、画像処理アプリで歪曲収差を「逆」補正して、樽型にすると、引き伸ばされた太陽像は当然ながら「円」に近づきますので、画像処理が前提であれば歪曲収差はあまり気にしなくてもよさそうです。)

まとめ

SIGMA 20㎜は描画性能も素晴らしいが、フォーカスロック・ボタンが素晴らしすぎる。